宇都宮大学 大学院地域創生科学研究科 工農総合科学専攻 横田・大津研究室

PearLab, Utsunomiya Univ.

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動的圧縮方式切り替えによる高速通信手法

研究概要

クラウドやビッグデータを活用したビジネスが盛んに行われるようになり、私たちが扱う情報の量は年々増加傾向にあります。扱う情報量の増加に伴い、通信でやりとりするデータの量も増えることになり大きな問題となっています。通信機器への負荷が大きくなり、ネットワークを介するシステム全体の性能が低下してしまうと、それを利用している多くのものが影響を受けてしまいます。情報量が肥大化している今日では、限られた通信帯域をうまく使っていくことが、システム全体の性能向上に繋がるのです。

通信帯域を効率的に利用する方法の一つとして、ネットワークアクセラレータなどのハードウェア機器を使用する方法が挙げられます。ネットワークアクセラレータとは、リアルタイムにデータを圧縮し通信帯域に流れるデータ量を削減し、通信帯域の負荷を軽減します。しかし、専用の機器は価格が高く、簡単に導入・維持が行えないという欠点があります。

他の方法としては、圧縮アルゴリズムを利用することが挙げられます。ネットワーク上でやり取りするデータ量が増え、通信の負荷が大きくなっていることが問題でした。圧縮アルゴリズムを使って通信するデータ量そのものを小さくしてしまえば負荷は小さくなります。近年では非常に高速な圧縮アルゴリズムが登場しており、ソフトウェア的なアプローチでリアルタイムにデータ圧縮をすることが可能となりました。ネットワークアクセラレータのようなハードウェア機器を増設することなく、通信帯域への負荷を軽減することが出来るようになったのです。データ圧縮をリアルタイムで行いながら通信を行うことで、ネットワークに流れるデータ量が削減され有効に通信帯域を活用することが出来ます。

しかし、高い圧縮率が見込める圧縮アルゴリズムは圧縮処理に時間がかかるため、圧縮が終わるまで送信が行えません。圧縮処理がボトルネックとなるためネットワークのパフォーマンスが低下する可能性があります。逆に圧縮処理が高速なアルゴリズムを使うと、確かにはすぐに送信可能な状態になりますが、あまり圧縮が行われずデータのサイズが小さくなりません。圧縮時間と圧縮率のバランスが重要なのです。

したがって、通信帯域を最大限に有効利用するためには、圧縮処理がボトルネックとならない範囲で、より高圧率の高い圧縮アルゴリズムを使用すればよいことになります。しかし、ネットワークで使用可能な通信帯域は常に変化しているため、特定の圧縮方式だけですべての状況に対応することは困難です。そこで本研究では、ソフトウェアの柔軟性を活かし、時々刻々と変化する通信帯域や入力データに合わせ、最適な圧縮アルゴリズムを選択する制御を実現することで通信帯域を最大限に活用することを目指しています。